たかつき能楽に親しむ会
会長金田 忠行

高槻と能楽

高槻市は大阪北部の北摂三島地域に位置する人口約35万人の市で、大阪と京都の中間にあり、歴史的に淀川流域最大級の前方後円墳・今城塚古墳やキリシタン大名である高山右近、北摂随一の景勝地として名高い摂津峡などが知られています。

高槻では、江戸幕府三代将軍徳川家光の時代(370年程前)に高槻藩主となった永井直清公が「能楽」を非常に愛好し、多くの者に積極的に能楽をたしなむように指示したといわれています。永井家は十三代、明治維新まで高槻城の藩主をつとめました。高槻城跡に残っている野見神社境内の能舞台(現在は新しく能舞台・儀式殿)では、昭和のはじめごろまで数多く能が舞われてきました。
私たちは、高槻市の文化芸術の振興、とりわけ古くから続いてきた伝統能の再興をめざし「能」を通して日本の和の文化を多くの方たちに理解してもらおうということで、2009年に「たかつき能楽に親しむ会」を設立し活動を続けてきています。

日本文化に親しみ、守っていく。

近年、日本人が長い歳月のなかで培ってきた伝統的な文化や美しい言葉は、著しい社会変化のなかで失われようとしています。
私たちは、古くから伝わる日本文化に親しむことにより、穏やかでゆったりとした心を取り戻すことができると考えており、日本の伝統的文化芸術を主体的に継承し守っていくことが、多様な価値観や文化が混在している現代社会においては非常に重要なことであると理解しています。

日本の三大伝統芸能(能・文楽・歌舞伎)は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されており、これらは世界の芸術に大きな影響を与えてきていますが、なかでも「能」が最も歴史があります。「能」は他の演劇と比べると難しく感じるかたも多いのですが、それは、観る人の想像力に委ねられているところがあるからだと言えます。事前にそのストーリーを理解し鑑賞していただければ、音楽と動きが一体となり、絵画のような美しい情景のなかで物語が進んでいっていることがよくわかります。

「能」は、心を癒し、脳を休める情緒思考芸術でもあります。日本人は、その特徴として情緒思考ができるといわれていますが、相手を思いやる気持ちなど、このような文化芸術のなかで育まれてきたものであり、日本が情緒あふれる国といわれる所以もそこにあるように思います。

おわりに

地道な活動でありますが、ここまでの過程で、文化庁や大阪府、高槻市、島本町等の行政機関や関係各団体の方々から多くのご支援とご協力を賜ることができるようになりました。
私どもの活動は、伝統能の再興と啓発、高槻の市民憲章にある「文化の華を咲かすまち」の実現と「和の文化」の伝承を目的としており、多くの関係機関やボランティアの方たちによって支えられています。
能は長い歴史のなかでつくられてきた文化です。何度か鑑賞するなかで、その面白さがわかってきます。
多くの方々に、芸術としての「能」、伝統文化としての「能」に直に触れて頂き、その魅力を知っていただければ有りがたく存じます。

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